登園から、もう1ヶ月が過ぎた。
バスに乗り込んだあと、ふと振り返って。ちょっと背伸びをして、窓の外のわたしを見つけて。そしてニコニコ笑顔で、手を振ってくれた。
自分からこちらを向いて、笑顔を見せてくれたのは、初めてのことだった。なんでもない朝のはずなのに、ちょっとじんわりきてしまった。
目次
最初の1ヶ月、「いやだ」が続いた
入園してしばらくは、毎朝がちょっとした戦いだった。
「幼稚園、いやだな」。そのひとことが、何日も続いた。バスに乗るときも渋い顔。乗り込んだあとも、こちらを見ない。笑顔はなかった。
慣れるまで時間がかかる子もいる。それはわかってる。でも、見送るたびに胸がちくっとした。親ってそういうものだな、と思いながら、毎朝バスを見送っていた。
転機は「発表したい」のひとことだった
幼稚園には、朝のちょっとした時間に、自分が作った作品をみんなの前で発表できる場があるらしい。
先日、子どもが「やってみたい」と言い出した。
それまでとは、空気がまるで違った。後ろ向きだったのが、急に前を向いた感じ。「これ持っていく」と自分で作品を選んで、準備をしていた。その姿がなんだかたのもしくて、かわいかった。
そのあたりから、メキメキと前向きさが出てきた。幼稚園の話を自分からするようになり、表情も少しずつ変わってきた気がした。
発表した日の帰り、ころっと変わった
初めて作品を持っていった日の帰りは、明らかに様子が違った。
声が大きくて、目が輝いていた。「幼稚園たのしかった」どころか、「また行きたい」という顔をしていた。ころっと「幼稚園がたのしみ」に変わっていた。思わず「ほんとに?」と聞き返してしまった。
あんなに「いやだ」と言っていたのに。子どもの切り替えって、本当に早い。でも、それでいい。あの後ろ向きな時間も、今の前向きさにつながっているんだと思う。
認めてもらえる場が、子どもを変える
自分のことを、みんなに見てもらえる。それだけで、こんなに変わるんだと思った。
大人だって同じかもしれない。「ここで認めてもらえる」という安心感があると、もっとやってみようという気持ちになる。自分を出せる場があると、人は前に進める。
そういう場を丁寧に作ってくれている幼稚園に、改めて感謝した。ただ預かるだけじゃなく、子どもが「ここにいていいんだ」と感じられる工夫がある。そのさりげない配慮が、どれだけ大事か。今回のことで、ちゃんと届いた。
今日は、2回目の作品を持って登園した日だった。バスに乗り込んだあと、振り返ってくれた。背伸びをしないと、窓からわたしのことが見えない高さ。それでもちゃんと見つけて、ニコニコで手を振ってくれた。
たったそれだけのことなのに、一日中ずっと心が温かかった。こういう小さな朝のことを、ずっと覚えていたいと思う。

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